第八章 電波広告と北海道経済かって民放研に在籍していた、東山禎之氏はJNNデータバンク発行の「データーによる効果的なメディア戦略」の中で「広告費から見たCMの社会経済的役割」についてマスメディアの社会的役割・機能として「報道」「教育・教養」「娯楽」「生活情報」「広告」「社会監視」等を挙げられ、テレビにとって広告機能は他の諸機能と共に重要な位置を占めていると述べ「テレビ広告費」の経済的側面に関わる役割・機能を強調している。 北海道に初めて民間放送が誕生したのが1952年の北海道放送ラジオであるが、軌を一にして同年4月1日より第一期北海道総合開発計画がスタートした。報道メディアとしての役割を担う民間放送がこの総合開発計画の推進に大きな役割を果たしたことは言うまでもない。このことはその後1957年北海道放送がテレビ放送を開始し、映像メディアであるテレビがいち早く開発関連番組をシリーズで放送し開発の実態を道民に知らしめると共に世論喚起に努めた事でも実証されている。その後開局した各テレビ局も開発計画を報道の一つの柱として取り上げてきた。年々道内の経済規模も拡大し、社会構造も大きな発展と変化の道を歩み乍ら今日をむかえているが、これまでの50年に亘る歴史の中で電波メディアが果たしてきた地域経済・開発面での役割は極めて大きいものがあったと自負できよう。今日、電波メディアの放送活動は地域経済・社会活動とは不可分の関係にあるが、メディアとしても自らの役割を認識しつつ更なる努力に努めなければならないだろう。
一方、広告メディアという立場から言えばこれら開発によって新しく創造された消費市場に対する商品情報を含めた生活情報の提供は、道民の生活水準の向上、生活の機能化・近代化に果たした役割も見逃すことが出来ない。このことが地域の経済を活性化させる原動力となり、点から面への広がりが北海道全体の経済を引き上げる力となったのである。その先鞭をつけた具体的事例の一つとして挙げられるは、1978年北海道の経済施策の柱として推進された「一村一品」運動の展開であろう。1984年北海道新聞が「北海道
自立を考える」をテーマーに取り上げ道民に対する意識調査を行った。
その調査資料によれば(調査実施は1983年11月)一村一品運動を知っている率が69.0%、マチの発展に役立つとの回答が64.8%となっているが、その後一村一品運動を側面から推進し、地域特産物・観光資源を今日的にグレードアップした大きな力は映像メディアであろう。特に高齢化が進み健康面から「食」に対する消費者の関心が年々増大する中で映像による商品紹介は極めてインパクトが強く、ムラ起こし運動の一環として始められた商品開発がテレビの伝播力を背景に新たな商圏開発と需要の創造に繋がるなどの成功事例が衣・食・住を含めた様々な分野で数多く挙げられるのである。このような映像によって視聴者の購買意欲を刺激し市場開発に成功した事例はラジオ・テレビによる通信販売即ちラジオ・テレビショツピングにも見られる処である。これなどもラジオ・テレビ等の電波媒体が果たしつつある社会・経済面での大きな功績の一つに数えられるだろう。
さて、北海道は全国土の22.1%を占める広域圏であり、北海道の商圏は本州他府県とは違った特性を持っていると言われている。北海道商工指導センターの「北海道の商圏」によっても北海道は大別して8大広域商圏と更に細分化された35の中小商圏に区分されている。同じ北海道域にありながら地域によって消費動向が異なる独特の消費性向にマッチしたマーケッテイングの展開は地域の消費市場を活性化し、ひいては地域の経済を活性化するための必要条件でもある。其の意味から言えばテレビ・ラジオは新聞とは違ったメディア特性によりこれらを推進してきた原動力であった。
特に今後多メディア時代を迎え多種多様な情報が交錯する情報過多時代にあって、これまで長い間培ってきた既存の電波メディアが、新たな電波メディアとの競争場裡で勝ち抜く道は、多くのメディア関係者、有識者の提唱するような地域密着路線であり、電波広告と言う面から見ても、電波収入が拡大する為には、従来にも増した地域広告、地元広告重視の対応が求められる事となろう。
いずれにせよ、北海道電波広告50年の歴史の中でも地域経済と広告費は不可分の関係にあったことが実証されてきた。このことは景気の変動と広告費の関係においても相関関係にある。これまでの北海道地区広告費の推移を見ても景気の上昇によって広告費も伸長し、逆に景気の後退局面では広告費も低迷するというのが地元広告費の一つの特徴でもあり、このサイクルを繰り返しながら今日に至っているのである。
景気に関して言えば景気を引き上げる大きな要因として常に指摘されるのが個人消費拡大であり、景況判断のバロメーターとして取り上げられている。景気浮揚に果たす電波広告の役割は極めて大きいものがあろう。近時個人の価値観が多様化し、モノ余りと言われる時代背景の中でこれから電波広告の果たすべき役割は単に商品告知という「売り」のマーケッテイングから進んで前段でも指摘した様に、機能的・合理的生活設計、生活のレベルアップに資する広告の社会性であろう。このような機能を果たしつつ直接・間接に地域の活性化に寄与していかなければならない。
現在北海道は全国に比して経済的地盤沈下が危惧されている。北海道の経済的体質を強化するためには地場産業の振興と道外に向けての商圏拡大による域際収支の改善に更なる努力が求められているが、其の面からも今後電波広告の果たすべき役割は極めて重要であると言えよう。
図 70 北海道の経済生長率と電波広告費推移
図 71 経済生長率とテレビ収入
図 72 道内総生産・テレビ収入伸び率対比
図73 国内総生産・テレビ広告費伸び率対比 上のグラフは道内総生産とテレビ収入(年度)と、国内総生産とテレビ広告費(暦年)を示したものであるが、一見して判る様に道内の経済成長に対してのテレビ広告費はほぼ全国の成長と軌を一にしている。これは再三述べてきた様にテレビの持つ媒体特性、即ち番組ネツトワークのウエイトが高い事に起因する。総生産についても伸び率のみ見れば全国的レベルと大差無い物の、問題は実額であり、所謂シェアの問題であり今後北海道経済を更に活性化するための産業構造を含めた総合的な施策が求められる処であり、この面での電波広告の果たすべき役割も極めて大きなものがあろう。
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